エリート弁護士との艶めく一夜に愛の結晶を宿しました
Honey.2 甘くない真実
 年度末は世間一般にどの業種も忙しくなる時期だ。私たち夫婦も例外ではなく、さらに稀一くんが二カ月ほどの海外出張を予定していたので私の気持ちはどこか落ち着かなかった。

 出発がもう明日に迫っているから尚更だ。こればかりは結婚前から決まっていたことなのでしょうがない。

 行き先はニューヨークで、とくに心配はしていない。稀一くんにとって第二の故郷といっても過言ではないだろうから、そこまでストレスを感じずに過ごせるだろう。

 私も一度は行ってみたいとは思っている。アメリカには父の仕事の関係もあって、いろいろな都市に滞在した経験はあるが、実はニューヨークはまだなかった。

 観光名所も多いし、実際に見て、足を運んでみたいところはたくさんある。もちろん稀一くんは遊びに行くわけではなく仕事なので、働きづめになるんだろうけれど。 

 それにしても直前まで荷造りしないのは、どうなんだろう。本人より私の方が気を揉んでいた。

 留学経験の影響もあるのか稀一くんは荷造りに慣れている。妻として私が用意するものなどほぼなく、彼は夕食後にさっさと荷造りを終えてしまった。

 稀一くんが長年愛用しているのは、有名ブランドのダークグレーのスーツケースで、軽量かつ強度に優れているのにくわえフラットなデザインが気に入っているんだとか。

 作業を終えたところを見計らい、私は休憩を勧めるがてらコーヒーを淹れる。彼の部屋に持っていこうか迷ったが、先に稀一くんがリビングにやってきた。
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