エリート弁護士との艶めく一夜に愛の結晶を宿しました
Honey.4 伝えていない本音
 安定期とは一般的に妊娠五ヶ月、十六週目を迎えた辺りからを指すらしい。つわりが落ち着くのもそれくらいの頃からと言われていて、私はその日が来るのを今か今かと指折りに待ち望んでいる。

 妊娠が発覚した時点で妊娠三ヶ月だった。それからまる一ヵ月がやっと経過したところで、このひと月はとくに長く感じた。

 梅雨入りし天気が崩れる日々が続いている。雨の匂いさえ気持ち悪くなる要因で、私のつわりは落ち着く気配はまったくない。

 それも妊娠している証なのだとなんとか前向きに捉えて日々を過ごす。

 この間、役所に母子手帳を受け取りに行ったり、稀一くんに付き添われ病院に通ったりと本当に妊娠したんだなぁ、としみじみ感じる。予定日は十二月半ばらしい。

 今年のクリスマスには家族がもうひとり増えているのだと思うとなんだか不思議だ。

 六月の最終週の日曜日、今日は久しぶりに稀一くんと出かける予定になっている。体調は相変わらず優れないけれど、私はずっと楽しみにしていた。

 なんとか仕事は休まずに出勤しているが、家に帰るとほとんど横になっている状態で、気分転換も兼ねて、買い物をしたいと言い出したのは私のほうだ。

 稀一くんは心配しつつ予定を空けてくれた。

「調子が悪くなったらすぐに言えよ」

「はーい」

 助手席のシートにもたれかかり笑顔で答える。
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