ボトルメール
「私でござるか。ではいきますでござる」
そして、語尾を「ござる」に変えるというこの罰ゲームを受けたのは楓だった。
「なんだよ、いきますでござるって」
彰は楓に笑いながら突っ込んだ。俺はそんな二人の姿がとても嬉しかった。彰は仲が悪くなったのは自分のせいだとか言ってたけど、楓も別に仲が悪いとかは思ってなくて、ただ全部彰の為だった。『人の為』と書いて『偽』と書くけどこの関係だけは『本物』だった。それに、楓だけじゃなく俺はやっぱりこの二人が好きだ。
芽吹さんの言っていた『冷凍保存』という技術。さっきドライヤーで髪を乾かしながら調べたら、現在で冷凍されている人は七十人近くいるらしい。これが多いのか少ないのか俺には分からない。でも、俺はどんな技術を使ってでも彰を助けたい。そう思った。
「次、俊の番でござるよ」
「あ、うん。」
でも、出来れば俺は彰と同じ時を生きたい。
「三回連続でござるか!」
俺はこの奇跡のように彰の病気が治ることを信じている。
「また、俊の勝ちでござるか!」
俺の勝ちでこの神経衰弱の戦いは幕を閉じた。
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