みうとうみ ~運命の出会いは突然に~
第6章 耐えがたい夜
あの夜、大洋に気のないそぶりをしてみせたのは、最後の悪あがきだった。
もう気持ちのタガが外れた。
久しく忘れていた感覚。
完全な片思い状態に陥った。
仕事中でも、ふと気づくと、大洋のことばかり考えている。
雨のなかを去っていった後ろ姿。
驚くほど整った横顔。
グラスを持つ少し骨ばった手。
人を和ませる会話。
そして……
「あなたと知りあえてよかった」と言ったときに見せた照れくさそうな笑顔。
はあー。
でも、側から見たら、完全に若い男に熱をあげてる身の程知らずなアラサーだよね。
もう一度ため息をついたとき、後ろからぽんと肩を叩かれた。
「いくら利用者が少なくても、そんなため息ばかりついていたらだめよ」