グレーな彼女と僕のブルー
episode5.

 そろそろ雨が降りそうだ。

 幾重にも重なった厚い雲の層を見上げ、足早に歩いていた。

 部活からの帰り道。もうすぐ家に着くだろうという場所で、すっかり見慣れた後ろ姿が視界の端に映り込んだ。

「……ん?」

 あれって……紗里だよな?

 時刻は既に六時半を過ぎており、日も暮れているというのに一体どこへ行くつもりだろう。

 何となく気になり、帰路とは別の方向に足を向ける。

 彼女は一心不乱に歩みを進め、今まさに道路橋を渡っている。

 何もこの時間帯に出かけるのを不審に思ったわけじゃない。あの後ろ姿が手に持つ物を見て怪訝に思ったのだ。

 僕はひそかにあとを()けることにした。

 自動車の群れが、すぐそばの車道をこちらに向かって走り抜けて行く。明らかにスピードの出し過ぎだと思われるスポーツカーは、まるで弾丸みたいだ。絶えずすれ違うヘッドライトがチカチカと眩しくて、片目を細めた。

 本音を言えば一刻も早く家に帰って休みたい。けれども明日は土曜日で部活しかないし、授業の予習は明日の空いた時間にやればいい分、気が楽だった。


 あの火事から今日でちょうど一週間だ。

 長距離走の試合までは、既に十日を切っていた。今日の部活は二十分ほど延長をした。
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