激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす

颯真に実際に会った山崎は『月城さんの旦那さんイケメンすぎ。あれ毎日見てるんじゃ、あいつに勝ち目はないよなー』とよくわからないことを言っていた。

矢上は千花が既婚者であるという事実に配慮してくれたのか、カフェ巡りはやめてネットで参考になりそうなレシピを探すことにしようと提案してくれた。その顔がどこか沈んでいたような気がしたが、聞いても「いや、なにもない」と言われてしまったので、それ以上は深く追求していない。

それよりも気にかかるのは、あの日の颯真のことだ。

急に飲み会に迎えに来たと思ったら、その帰りは珍しく不機嫌だった。

指輪を外していたことを咎められ、既婚者なのを隠していたのは結婚を後悔しているせいなのかと聞かれたが、一体どういう意味だろう。

さらに千花を自分のものだと独占欲を滲ませる発言をしながら、彼らしくなく少し乱暴に一晩で何度も抱かれた。

そんなことは初めてのことで、次の日の朝は初めて腰が立たないという惨状に見舞われた。ベッドから降りようにも下半身に力が入らず立ち上がれない。そんな千花を見て颯真は申し訳無さそうに謝ってくれたが、千花は嬉しかった。

颯真が何を考えているのか全部を理解することは出来ないが、少なからず自分を想ってくれているのではと感じられたから。

ただ単に月城家の嫁が結婚の事実を隠して働いていたのが気に食わなかっただけかも知れない。颯真をないがしろにしたと思っただけかもしれない。

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