激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす


「千花ちゃん、これ読んでー」

午後2時過ぎ。
おやつの蒸しパンを作り終え園舎へ出ていくと、4才児クラスの方から可愛らしい声がかかる。

ゆり組のひかりちゃん。以前手作りの紙芝居を読んであげたのをきっかけに、よくこうして声を掛けてくれるようになった。

「うん、いいよ。今日は何の絵本?」
「赤ちゃんの本!」

ゆり組を担当している陽菜の話によると、ひかりちゃんにはあと2ヶ月程で妹が生まれてくるらしい。

4歳なんてまだまだ母親に甘えたい盛りだろうに、いいお姉ちゃんになろうと準備していると聞いて、抱き締めたくなるほど愛おしく感じる。

「ひかりちゃん、その前に千花ちゃんにお話があるんじゃなかった?」

他の園児と一緒に人形で遊んでいる陽菜がひかりちゃんに言うと、「そうだった!」とぱたぱたと自分のカバンから小さなノートのようなものを取り出してこちらに戻ってきた。

「千花ちゃん見て!ひかりね、今日おやさいも全部食べられたから、ひな先生にシール貼ってもらったの!」

ひかりちゃんは彼女のお母さんをも悩ますほどの偏食で、特に緑色の野菜はほとんど食べられなかったそう。

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