王子達は公爵令嬢を甘く囲いたい

 女神像の前まで歩いていく。間近で見るとその精密さや神々しさがよく感じられた。

 私は前に座り、女神様に祈りを捧げ始めた。

 「(もし、女神様がいるならありがとうござい
 ます。私をこの世界に転生させてくれて。おか
 げで今は楽しく暮らせてます。
  私は大切な人たちを守りたいです。そして、
 このまま笑顔でみんなが過ごせたらいい、と思
 っています…)」

 それは、主に感謝と願い。全員は無理かもしれない。でも、私に出来る範囲で誰かを助けたいと、前世の影響もあって思っている。後から後悔したくないから。

 『ねぇ、アンジュ聞こえてる?』

 …ん?

 『あ、聞こえてるっぽいよ。』

 『そうだね。良かった〜。』

 『……』

 頭に直接聞こえてくる…。誰?

 『ぼくは、全の妖精王。』

 『あたしは、時の妖精女王。』
 
 『…無の妖精王……。』

『『『ぼく(あたし)達は、次期精霊(女)王』』』

 えぇ…。妖精王?!しかも、聞いたことのない属性があるよ。そして次期精霊王って…。

 あの、私に何か?

 『ううん。今は特に用事はないの。』

 『ただ、アンタがどういう子か気になって来た
 だけよ。』
 
 『…別に……。』

 そっかー。まぁいいけど。
 それより、兄様のときもあなた達?

 『違うよ〜。』
 
 『あれは下級妖精ね。』

 『…オレらより弱い奴らだ。』

 妖精って、下級とかあるんだ…。じゃあ精霊もか?

 『くわしくは─』

 『今度教えるわ。』
  
 『ぼくのセリフなのに…。』

 『…またな……。』

 

 ✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽

 
 「では、両手を水晶玉にかざしてください。」

 私はゆっくりと手をかざし、水晶玉に魔力を流し込む。

 すると、赤、銀、緑、黄、漆黒、そして透明な玉、合計6つが浮かび上がった。

 さらに、セピア色、虹色の玉も後から浮かんできた。

 「おぉ…!!すごいっ!火、風、植物、雷、闇、無
 属性。アンジュ様も6つの属性持ちとはっ!しか 
 も、あれはなんだ?知らない属性の色だ!」

 神官様は、さらに興奮した様子で一番はしゃいでいた。

 少し落ち着いてから、今度は魔力量を教えてもらう。

 「魔力量は…5万。うん、ザライド様と同じで
 すね。」

 兄様と同じか。双子だからだろうか?

 
 「アンジュ、お疲れさま。」

 兄様が微笑みながら声をかける。

 お父様とお母様は、兄様が祈りをしていた時以上に呆然とし、ブツブツ何やら呟いていた。

 「妖精が…。少なくともあれは上位以上よ…。 
 しかも、9属性以外の色……?!」

 「ザライドに続いてアンジュまで…。僕らの愛
 しい子供達はいくら何でも規格外すぎる…!」

 
 お母様はともかくお父様…。〈規格外〉って言葉、あなたにだけは言われたくないよ…。

 私たちがこうなのは貴方達のハイスペックDNAのせいですよ…。


 なんだか疲れた……。

 「はぁ…」と、思わず5歳児ならぬため息をつく。すると、兄様は目ざとくそれに気づいた。

 「疲れたよね。大丈夫?」

 「兄様…。はい。大丈夫です。兄様は?」

 「僕はアンジュより体力あるからね。」

 
 確かに。兄様はよくお父様の指南を受けたり、学校の校庭ぐらいの小さい方の庭を走っている。

 双子だし、今は男女の差は特にないだろう。つまり、兄様と同じように動けば同等ぐらいの体力はつくはずだ。

 丁度、運動したかったし、いいかもな。
 帰ったらお父様にお願いしよう。
 
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