恋の誘導尋問~恋に不器用な先輩に捕われたい~
突然の出逢い
 それは本当に偶然だった。仕事のない週末を満喫すべく、午前中は惰眠を思いっきり貪り、お昼過ぎに起床。ブランチをだらだら済ませて、ある程度のんびりから自宅を出発した。

どこでウインドウショッピングしようかと考えながら、弾んだ足取りで歩く。ちょうど繁華街を差し掛かったタイミングで、私の目がその人に自然と惹きつけられた。


 職場では、いつもビシッと整えられている髪型が、今はナチュラルな感じでまとめられているだけで、銀縁眼鏡の奥にある目元の印象まで様変わりしていた。柔らかい雰囲気がそこにあるおかげで、普段漂っている近寄り難いオーラがなかったこともあり、思いきって声をかけてみる。

「佐々木先輩!」

「あ、えっと……松尾?」

「ぉ、お疲れ様です」

 言いながら、小さく頭を下げた。憧れている先輩との対峙に、頭がまったく回らない。

(――うわぁ、突然すぎて会話が続かない! お疲れ様ですという言葉も、正直おかしかったんじゃないだろうか)
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