アクセサリーは 要りません

2―Side伊吹

母校での教師としての初年度、始業式から3日目、今日は入学式だった。

ホールの入り口で感染予防を呼びかける係で、アルコール消毒液が乗った机の前で、除菌のお願いを保護者や来賓者に声掛けていた。そこに校長でもある親父がやってきたが、俺は他へと同じ案内をしていた。

「伊吹、誰もいないタイミングを
見て来たんだ」

「何でしょうか?
公私をきちんと分けるようにと
決めた覚えが。
私は今、『公』ですので」

「分かった、では一言だけ。
母さんが寂しがってるから、
顔を1度出してやりなさい。

もう機嫌が悪くて、悪くて。
『貴方は学校で会えるかも
しれませんけれど』
とか、ぷりぷりして。
早めに頼むよ?」

「はぁ、そうですか。
分かりました。
じゃあ明日休みなんで、
今晩行きます」

「そうか、助かる。
母さんには俺から言っとく。
学校出る時にでもタイミングだけ
知らせてやってくれ。
邪魔して悪かったな」

「いや、じゃあ後で」
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