アクセサリーは 要りません

2―至誠学院入校までの日々―Side惠美里

教室までの、屋根のついた渡り廊下から見える山のところどころに、気持ち程度ピンク色が残っている。今年は桜の開花が早くて、明後日が入学式だというのにもう葉桜になってしまっている。

ここは京都府だけれど、京都市よりは奈良市のほうが近い。お散歩感覚で奈良市まで歩いても行けそうな距離である。

けいはんな学研都市の端にあり、古都京都という街並みではない。新しい建物が多く、ぐるりと360度見回したところで、お寺や神社どころか瓦の屋根も見えない。京都府は京都市も含めて人口減少しているけれど、奈良や京都だけでなく、大阪にも通いやすいここの市は、子育て世代を中心に人口増加らしい。私も増やした1人だ。

3月下旬にこちらに引っ越してきた日に5分咲きだった桜は、新しい生活を立ち上げるのと足並みを揃えて開いていった。

満開を迎えた朝、緊急事態宣言も出ていなかったので、朝食がてら奈良の運動公園に隣接しているスタドへ向かった。テラスからの桜が見えるこのシチュエーションでこの空き具合。ソーシャルディスタンスが保てるなんて東京では考えられない。午前中恩師に「引っ越しました葉書」を書きながらテラスでのんびり過ごした。次は、お気に入りの本を持ってこようと思った。

明日は土曜で出勤日、明後日は入学式のため出勤だけど、月曜日は振替休日だ。月曜日の朝にまたスタドに行こう。
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