異国の地での濃密一夜。〜スパダリホテル王は身籠り妻への溺愛が止まらない〜

愛の結晶は突然に

 緑が綺麗な小松菜と油揚げを一口サイズに切り小鍋に入れる。茹で上がり顆粒出汁を適当にまぶしいれお味噌をとき、湯気とともにあがってくる匂いになんだか胃がムカっとした。


「お母さん、お味噌汁と生姜焼きを作ってあるからね!」


「ありがとう。本当にいつもごめんね」


 今日の母は体調がいいのかいつもより声色が明るい。


「何言ってんの、助け合うのが家族でしょ?」


 ピーピーと炊飯器がご飯が炊けた事を知らせてくれた。かき混ぜておいて保温状態にしておけば母も温かいままのご飯が食べられる。しゃもじを水で濡らしカパッと蓋を開けた。炊き立てのご飯の匂いがムワッと湯気と共に広がり鼻の中に入ってくる。


「うっ……」


 急な吐き気に襲われ急いでトイレへ向かった。気持ち悪い。お腹の底から湧き上がる吐き気に嗚咽するが胃液しか出てこない。最近食欲が無かったから風邪でも引いちゃったかな……


「真緒、どうしたの? 大丈夫?」


 母が私を心配してトイレへ様子を見にきたみたいだ。ドア越しに不安の声が聞こえる。心配をかけないよう急いでトイレットペーパーで口を拭い笑顔でトイレのドアを開けた。


「大丈夫大丈夫、ちょっと疲れてるみたい。でも元気だから練習に行ってくるね」


「最近なんだか顔色も良くないし、無理しない方がいいわよ。今日は休んだら?」


「あと三ヶ月もしないで演奏会だもん。今休んでられないよ。大丈夫だから、行ってきます」


 心配そうに私を見つめる母を背にアパートのドアを開け、外に出た。
 十月も半ばになり、ようやく気温が涼しくなってきた。身体を通り抜けていく風はひんやりと冷たく私は手に持っていたパーカーを羽織る。
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