ラーメン、奢ります。




“さっきはごめん”


そう言えたら、どれだけいいだろうか。
きっとすぐに丸くおさまる。

だけど、僕はいつも素直になれない。

いつか彼女に呆れられてしまうんじゃないか。


そう思っても、頑固な僕は謝ることができない。



僕に背を向けて拗ねている彼女。
その背中さえ愛しく思っていることがバレたら、もっと怒らせてしまうんだろうな。




「ラーメン、奢ります」



僕の声に彼女が振り向く。
膨れっ面の彼女は唇を尖らせている。




これは僕たちだけの仲直りの合図。
僕の精いっぱいの素直。




「……煮卵、ふたつね」
「りょうかい」
「……餃子も」
「いいよ」





ほんとはね、気づいているんだよ。
怒ったぶんだけ、トッピングを増やすこと。

でもごめんね。
そんなところも愛しくてたまらないんだ。





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