クールな社長は政略結婚したウブな妻を包容愛で満たす
ある日、気がついた

 高遠和優(たかとうなゆ)は、この秋で23歳になった。

幼い頃に心臓の大手術を受けていたので、
当時は家族の誰もがここまで生きられるとは思っていなかったそうだ。

母親の奈津子(なつこ)は、和優が幼い頃に思いがけない病で命を落としている。

和優(なゆ)は、母の分まで生きようと心に決めていた。

目標は、30代で亡くなった母の歳を、うんと超えて生きる事。
そして、母と同じように結婚して子供を産んで母親になる事。

自分の手で子供を育て、温かい家庭を築きたい…。


その夢を実現させる為には、『結婚』しなければならない事が
和優(なゆ)の心にずっと重くのしかかっていた。


『この胸に残る手術痕…これを見たら、男の人は引いちゃうかな…』


どうやったら子供が出来るかくらいは知っていたが、
20歳を過ぎても和優(なゆ)は、恋をしらないままだった。

病弱で異性との出会いが無かったせい…かもしれない。
ただ、和優の身体に残る手術の痕が、彼女自身を臆病にさせていたのだ。



彼女の夢に一歩近づく為の『結婚』だけ(・・)は、半年前に…した。

夫とは『白い結婚(マリアージュ・ブラン)』だ。

夢に見た我が子は持てそうに無かった。





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