これがシラフだったら、こんな羞恥はとても耐えられなかっただろう。


翌朝、私が目を覚ました時には天音の姿は部屋に無く、居た堪れなくて逃げるように自分の部屋に戻った。


いっそ、記憶が飛んでいれば良かったのに。彼のキスもあの肉体美も滴る汗も、私を求めた時のあの獣のような熱い視線も。
全てをばっちり覚えてしまっている自分に朝から目眩がした。


その日は観光に行く予定だったものの、私はあまりの羞恥と"もし彼に会ってしまったらどうしよう"というパニックで部屋から出られず。ベッドの中に潜り込んで悶々としていた。


聞いた話によると案の定傑くんも梨香子さんも二日酔いで動けなかったらしい。


そしてその日の夕方。


キャリーケースを引きながら恐る恐る部屋を出た私は、ホテルをチェックアウトしてタクシーで空港へ。チップを渡して降り、そのまま夜の便で私は帰国した。


都内に戻ってきた私は、あの夜を思い出す度にうるさく胸が高鳴ってしまい、困り果てていた。


天音の声や息遣いを思い出すだけで、身体が疼いてしまうくらいだった。


まさに一夜の過ちというやつだ。それまでお酒で失敗したことがなかったため、まさか私がそんなことをするなんて思ってもみなかった。



"忘れよう"



そう思うものの、しばらく天音のことが頭から離れてくれなくて。


当時恋人もいなかった私は、何も考えたくなくてひたすらにバイトを詰め込んで忙しい日々を送った。


そして卒業して就職して。目まぐるしく変わる日常に、そんなことを考えている余裕もなくなり。ようやくあの一夜のことはすっかり忘れてしまったのだった。