忘れたとは言わせない。〜エリートドクターと再会したら、溺愛が始まりました〜



「そう言えば、この間唯香がイケメンと外車に乗ってどっか行ったって受付の子が噂してたけど、本当?」



淡々とした声に、パスタをフォークに巻く手が止まる。



「え、あれ見られてたの……!?」


「ってことは本当なんだ?」



しまった。墓穴掘った……。



「何々、どういうこと?唯香に男の影なんて私見たことないんだけど。詳しく教えなさいよ」



面白いものを見つけたかのような視線に、私は言葉を詰まらせる。



「いや、あれは別にそういう感じじゃ……」


「んな訳あるかって」


「……」



まさか見られていたなんて思わなかった。もしかしたら他の社員でも見ていた人がいるのかもしれない。



「まぁ、唯香には元々浮いた話が全く無かったから、別人なんじゃないかって噂になってるみたい。私も知らないって答えたからその話は広まりはしないと思うけど」



それは私にとってはありがたい話だった。


確かに天音はイケメンだから、何かと目立つ。


今後もし、また食事に誘われることがあるようなら会社に迎えに来てもらうのはやめよう。



「……でもまぁ、もちろん私にはぜーんぶ話してくれるよね?」


「いや、その……」


「ね?」


「……はい」



圧を感じる侑芽のギラギラした視線に私は頷くしかなく、三年前にニューヨークで出会ったこと、そして先日傑くんの働く病院で再会したことを話した。



「会ったのも久しぶりだったから、成り行きでご飯に誘われて……」



ニューヨークで一夜を共にした話には触れずに、あくまでも傑くんの同僚と再会したのだと説明した。


侑芽は「へぇー……そんな偶然って本当にあるんだ?すごい」と驚きつつも納得したように頷いてくれた。



「じゃあ、その人とデートしてたんだ」


「っ……」



しみじみと呟いた言葉に、私は飲んでいたアイスティーを溢しそうになる。

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