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「唯香!」


「侑芽。お疲れ」


「お疲れー。行こ」


「うん」



天音の家に不本意ながらお泊まりをしてから、三週間の月日が経過した。


あの後、私は急いで食器を洗いそのまま逃げるように天音の家を後にした。天音もわかっていたのか、特に止められずに"また連絡する"と嬉しそうに笑っていた。


玄関を出てエレベーターホールに行った私は、表示されている25階の文字を見てしばらくその場から動けなかった。


やはり天音の自宅はタワマンの上階だったらしい。窓の向こうにはいくつもの同じようなタワマンが並んでおり、高級住宅地なのが手に取るようにわかって倒れそうになってしまった。


なんとかそのまま自宅に帰り、悶々とした週末を過ごした。


……あんなに天音とのキスに夢中になると思ってなかった。


あのまま押し倒されていたら、多分私は天音を容易く受け入れていたと思う。


激しいキスで絆された心と身体は正直だ。本気で抵抗なんてできなかったと思う。


すぐに身を委ねていたと思う。


キスだけで、三年前のあの夜が鮮明に思い出された。




あれ以来天音とは数回デートを重ね、その度に甘い言葉と甘いキスで翻弄された。


しかしその先に進むことはなく、あれ以来泊まることもない。


それ以降は毎日連絡が来ているものの、病院が大分バタバタしているらしく"また時間ができたら会いにいく"と言われた。


それに嬉しいと思ってしまう自分と、それがいつなのかと少し寂しさを感じている自分。


天音とのメッセージのやりとりを遡って見てはため息がこぼれ落ちる。


感情の変化に、私自身が一番戸惑いを感じていた。


その戸惑いの打開策を得るべく、今日は就業後に侑芽に相談してみようと居酒屋に来ていたのだ。