置き去りにされた花嫁をこの手で幸せに

本当に?

お正月が終わり、年始初めの仕事はホテルの大広間に本社の社員は一同に集まり社長からの年始の挨拶がある。

私は今年は行きたくないがこれも仕事。
仕方なく大広間に向かう。
今日も朝から加賀美くんと出社した。大介くんとも改札で会い3人でエントランスを抜けるとまた視線がこちらに集まった。
年明け早々気が重いが前を向いていきたいと決めたから私は下を向かずにエレベーターへ向かった。

出社し、鞄を置くと本社を出てホテルへと移動する。
ここには悠介も雄介の相手もいるはず。
顔をこわばらせ、手をぎゅっと握り締めながら歩き始める。

「なぁ、槇村は体調悪いから保健室行けば?」

「え?」

顔を上げると加賀美くんが言ったのだと気がついた。

「槇村体調悪いだろ。とりあえず保健室で休んでおけよ。どうせ年始の挨拶で社長の長々した話を聞くだけだし、1人くらいいなくたってわかりゃしないよ」

「そうですよ、顔色悪いから保健室行ってください」

みんな私が行きたくないことを知ってて声をかけてくれてるのだろう。
頑張りたいけど、今日ばかりは頑張れなさそう。

「本当にごめんなさい。ちょっと行けない。先に戻ってていい?」

「あえて保健室に行っておけよ。ズルじゃないぞって」

「うん」

私はみんなから離れて保健室へ向かった。
すると途中のトイレから声が聞こえてきた。

「今日も加賀美さんたち引き連れて出社してたね。何様のつもりかな。山口くんまで引き連れ始めたよね。今日の新年の挨拶で阿川さんたち
と会うのも面の皮が厚いから平気なのかね。」

「平気なんじゃない?慰謝料めちゃくちゃ取り上げたらしいじゃん。凄いよね。しかも辞めないってどれだけ性格悪いんだか。もしかして阿川さんが辞めるの待ってるのかな」

「うわ、最悪じゃない?阿川さんは慰謝料払わなきゃならないのに結婚して子供も産まれるんだから辞めるわけにはいかないよね」

「捨てらるだけの何かがあったんじゃないのかな。一方的に阿川さんだけを責められないよね」

私はそれを聞いて血の気がひいた。
やっぱりみんなにそう見られてたんだ。
そう思うと駆け出していた。
もうヤダ。
もう無理。
そう思うと息が苦しくなってきた。
はぁ、はぁ、はぁ…
また息が吸えなくなってきた。
苦しいよ。
角を曲がった階段の踊り場に座り込むと自分でも息を吸っては行けない、吐かないとと思うのに吸えない苦しさからどんどん焦ってくる。
苦しい。
はぁ、はぁ、はぁ……
手が震えてきた。
苦しくて涙がこぼれ落ちてきた。

どうしよう

私はあまりの苦しさに崩れ落ち横になってしまった。
そのまま意識を手放してしまった。
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