嘘は溺愛のはじまり
番外編【新婚夫婦の、ある一日】
番外編【新婚夫婦の、ある一日】


「どこか行きたいところはある? そう言えば前に『映画に行こう』って話してたけど、どうする?」

「えっと……」


伊吹さんは、相変わらずとても仕事が忙しい。

先週末も、その前も、会合やら会議、取引先との会食――と、新婚だというのになかなか一緒に過ごすことが出来ないでいた。


結婚して2ヶ月。

不満は全くない、けれど――。


「あの、映画……家で見たいです」

「家で?」

「はい、ここで」

「結麻さんがそれが良いなら、俺はもちろん良いけど」


不満はない。

ただ、伊吹さんが忙しすぎるのが、心配なだけ。


仕事が大変なのに……それなのに私まで丁寧に構おうとするから、今日こそは伊吹さんにゆっくり身体を休めてもらおうと自宅で過ごすことを提案した。

幸い、自宅に居ながらにして映画やドラマが見放題になっている。

もちろん最新作の映画は見られないけど、それでも十分だ。


リビングのカーテンを閉めて少し薄暗くなった空間で、テレビの電源を入れる。


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