「……転勤、ですか?」


「あぁ。四月から新しく支社を作る話は知っているだろう?それの立ち上げに関わることになった。だから来月から最初の数年は向こうに常駐することになったんだ。
そこで、津田島(ツダシマ)さんについてきて欲しいんだが。どうかな?」



「数年……ですか。……確か福岡、でしたよね?」


「あぁ。慣れない土地だろうし、おそらく忙しくて大変な数年間になると思う」


「……少し、考えさせていただけますか?」


「もちろんだ。強制するつもりはない。まだ時間はあるからしばらくゆっくり考えてくれ」


「はい。ありがとうございます」



目の前のデスクにいる橋本(ハシモト)常務に、私は頭を下げて常務室の隣にある秘書室へ戻った。


八畳ほどの、常務室に比べると決して広いとは言えない空間。しかし私にはこのくらいのスペースがちょうど良くて、会社の中では一番落ち着く空間だ。


棚の上にあるコーヒーメーカーにミルで挽いた豆をセットしてスイッチオン。


その間に日課となっている窓際にあるもうすぐ花が咲きそうなサボテンに水をあげた。


熱々のコーヒーをカップに注ぎ、自分のデスクに腰掛けて少し休憩をする。