何も言わないで。ぎゅっと抱きしめて。



「え?ぱぱ?」



驚いたようにクレヨンを置いた隼輔は俺のいるドアの方を振り向いて、目が合うとぱあっと顔を明るくして一目散に走ってくる。



「ぱぱあー!」



しゃがんでその小さな身体を受け止め勢いそのままに抱っこすると、俺の肩に顔を埋めるようにして「ぱぱ!ぱぱ!」と喜んでくれる。


それが嬉しくて、たまらなく可愛くて思わず顔がにやけた。



「隼輔くん、毎日パパのお話ししてくれるんですよ」


「え、そうなんですか?」


「はい。お休みの日にどこどこに行ったとか、パパとお絵描きしたとか。一緒にねんねしたとか。すごく楽しそうにお話ししてくれるんです」


「へぇ……」


「ね?しゅんちゃん!」


「うん!ぱぱだいちゅき〜」


「ははっ、パパも隼輔が大好きだよ」



そんな嬉しいことを言ってもらえるなんて思っていなかったから、目尻はだらしなく下がる一方。


汚れてしまった着替えやプリントを渡され、隼輔を抱っこしたまま託児所を出る。


チャイルドシートに座らせてから舞花に"無事にお迎え行けたから安心して"とメッセージを送った。


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