猫目先輩の甘い眼差し
最後に園内を一周して外に。


よその家に身を隠してる可能性が高そうだけど……もしかしたら、こっそり移動しているかもしれない。


来た道を戻りながら再び捜す。

車の下を確認し、体を起こしたその時。



「うわっ!」



突然車の陰から人が現れて、驚いた拍子に後ろの段差につまずいて尻もちをついた。



「いたた……」

「すみません! おケガはありませんか?」

「はい……っ」



お尻をさすりながら顔を上げると、そこには大きな荷物を背負った男の人が1人。

そんな彼の腕に抱えられていたのは。



「うわっ! トラ……!」



目が合うやいなや、飛びかかってきたトラ吉。

匂いを嗅ぎつけたのか、かつおぶしを握っていた手のひらをペロペロ舐め始めた。



「もしかして飼い主さんですか?」

「はいっ! そうですっ!」



話を聞くと、電柱の陰でうずくまっていたらしい。

首輪が見えたため飼い猫かなと思い、この辺りを回っていたんだそう。



「本当にありがとうございました……!」



トラ吉を抱えて立ち上がり、深く頭を下げる。



「いえいえ。無事見つかって良かったです」



柔らかい笑みを見せたお兄さん。

「じゃあね」とトラ吉に手を振って去っていった。


サラサラの黒髪と切れ長の大きな目。

その姿はまるで、お上品な猫のようだった。
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