猫目先輩の甘い眼差し


「あー、猫ちゃんって警戒心高いって言うもんね」

「うん。だから、一体どんな手を使ったんだろうって気になってるの」



以前説明したように、トラ吉は臆病で人が苦手。

なので、家族以外の人と触れ合ったことがほとんどない。


平気だった人は、一緒に里親を探してくれた男の子くらいかな。

私と同じ動物病院に通っていて、保護猫の第一発見者だった。



「んー、おやつでおびき寄せたとか?」

「私も最初はそれかなと思ったんだけど……それだと検査に引っかかってるはずだよなって」



人間用のお菓子は猫にとって刺激が強く、例えるなら毒のようなもの。もし食べていたら具合が悪くなっているはず。

一応獣医さんからは、脱走とおやつの量に気をつけるよう言われた。

それ以外は何も言われていないから、多分違うだろう。



「なら、お兄さんを猫だと思ったんじゃない?」

「『この人は仲間だ!』って?」

「そう。それか、『この人は安全だ!』って感じたとか」



冗談っぽく口にした月香ちゃん。


まぁ、似てはいたけど……。

猫は縄張り意識が強いから、そんなすぐ他の猫と打ち解け合えないと思う。

というか、そもそも猫じゃないし。
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