猫目先輩の甘い眼差し
和解の前夜祭
◇◇



「世蘭ちゃん、おーい」



月香ちゃんの声で、揺れていたバスが止まっていたのに気づいた。



「トイレ休憩だって。行く?」

「大丈夫。ここで待ってる」

「了解っ。ちょっと行ってくるね」



席を立ってバスを降りていった月香ちゃん。


いけない。またボーッとしてた。


気分転換に、窓の外に視線を移す。

しかし、外には私達のバスと同じ色をしたバスが停まっており、他クラスの同級生達がのんびりしている姿しか見えなかった。


今日は待ちに待った、修学旅行1日目。
これからバスに乗って空港へ向かう。

普通なら気分が上がるはずなのに、今日は朝からイマイチ上がらない。



「郁海! お菓子交換しよ!」

「わりぃ。持ってきてねーや」

「ええーっ! そんなぁ!」



左側の列の前方で、私とお揃いのカーディガンを着た笹森くんが、お菓子片手に樫尾くんに話しかけた。

残念ながらフラれちゃったみたい。


気の毒だなぁと眺めていると、パチッと目が合った。



「あ、市瀬さん! お菓子持ってる?」



他の生徒達とすれ違いながら近づいてきた笹森くん。
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