二人が大学に来なくなってから数日が過ぎた。

私は心配が積もりながらも、零二君に連絡する勇気を持てないままだった。

ずっと欠席してる二人も気がかりだが、もし零二君に会ったとしても、私は恋ははじまる前にもう終わってるのだと、そう思ったら恐怖でしかなかった。
私の中に芽生えた感情は、私をとんでもなく臆病にさせていたのだ。


そしてとうとう訪れた講義最終日、大学に来ると、正門前がやけに騒がしかった。
カメラを抱えた人やマイクを持った人が何人も集まっていたのだ。

何事かと困惑した私にその理由を教えてくれたのは、同じ講義を受けてる学生だった。


「ねえねえ朝倉さん、深夜に更新されたネットニュース見た?」
「……ニュース?」
「あ、知らない?あのね、海外で超有名な日本人の博士が、うちの大学にお忍びで来てるらしいってニュースになってるの」
「へえ、そうなんだ」
「あんまり興味ない?」
「ええと……どうかな」

あまり話したことのない彼女とのやり取りに戸惑っていたが、次に寄越された情報に、一気に戸惑いが吹き飛んだのだった。


「日本ではあまり話題になってないけど、海外ではすっごいニュースになってるんだって。その博士の専門はロボット工学や人工知能関係でね、この大学でアンドロイドの実証実験をしてたんじゃないかって話なの。その博士、病弱でずっと学校にも通えなかったらしくて、顔を知る人はすごく少ないんだって。だから、その分野ではめちゃくちゃ有名なんだけど、日本人ってこと以外はほとんど情報がなかったらしいのよ。でもね、なんとその博士の名前はDr.(ドクター)サオトメっていうの!」

「―――え?」



私は、全ての感覚が活動放棄したように、無になった。



「どう?興味出てきた?」

彼女は興奮しきりに返事を求めてくる。
だが私は、たった今得たばかりの情報を頭で整理するのに必死だった。

言うまでもなく、サオトメというのは、零二君と英一君の苗字なわけで………


「サオトメっていう名前はもともと知られていたんだけど、どうも、海外から派遣されたある記者が、そのサオトメ博士の周囲を張り込んでたらしいの。それで、うちの大学との関係性を追ったみたい。ね、これって、零二君と英一君が講義に来なくなったのと何か関係あると思わない?時期的にもぴったりだし!」


瞳を爛爛(らんらん)とさせて情報を与え続けてくる彼女に、私は相槌さえ返せなかった。


「でね、さっき他の子達にも聞いてみたところでは、零二君が高校に行ってなかったって噂もあるみたいなの。だから、零二君が博士で英一君が試験体なんじゃないかって、みんなそう言って大騒ぎよ。英一君はロボットみたいに表情薄かったし、疑う余地はないんじゃないかって。ね、朝倉さんはどう思う?あの二人に何か人間離れしたものを感じなかった?一人は天才科学者、もう一人はアンドロイドなんだから、何も気づかなかったっていうのもおかしいじゃない?」


どうやら彼女は、入手したばかりのトップニュースを私に披露したいだけではなく、目についた学生達に何か情報はないかと尋ねまわっているようだ。
もちろん、私と零二君との関係など知る由もないのだろうけど。