その衝撃はすさまじい速度で私を駆け昇った。
《だから零二の行先に何か心当たりがあれば…》
「待って、とにかく一度そっちに行くから!」
通話を切る前に走り出すほどの激しい感情が破裂する。
詳細は一切分からないが、講義どころでない。
零二君が行方不明なんて、なんで?
まさか同級生が噂してた冗談と関係してるの?
引っ掛かりが嫌な予感に育っていくのを止められず、私は全速力で走って走った。
門の記者達を無視し、大通りですぐタクシーを拾う。
何がどうなってるのか、全く見えない。
でも零二君がいなくなったのは確かなのだろう。
そして、英一君が私のところにまで手がかりを求めてくるくらい、事は深刻なのかもしれない。
そんな緊急事態を知らされてしまえば、零二君の安否を得るまで、私の感情が落ち着くはずもなかった。
私は人生初の「お釣りはいりません」を運転手に言い渡し、オートロックのインターホンを押した。一度ではなく何度も何度も。
すると英一君からは
「今開ける。玄関も開いてるから勝手に入って」
いつも通り無表情な声で指示が返ってきたのだ。
それはまるで、ロボットみたいな声だった。