「すーずちゃんっ」
「わっ!柳瀬先輩…!」
びっくりしたぁ…と息を吐くと、彼は「ごめんごめん」と笑いながら謝ってくる。明るい茶髪が活発なオーラを放って、今日も爽やかだ。
「いやぁ、鈴ちゃんが図書室一番乗りなんて珍しいねぇ」
ははっ!と明るく笑う彼の名前は、柳瀬旭さん。三年生の先輩だ。
着崩した制服や染めた髪に目が行くが、先輩は不良ではない。図書委員の委員長を務めていて、成績も優秀、先生たちからの信頼も厚い。私も委員の後輩として、柳瀬先輩を尊敬している。
「いつもの幼馴染くんはどうしたの?」
「っ…!」
至って普通に、ふんわり問い掛けてくる先輩。彼の疑問は最もだ。いつも右京と話し込んで集合ギリギリの時間に来る私が、今日はきっちり10分前に、それも一番乗りで図書室に辿り着いた。
と言っても、図書委員の放課後の活動は緩いから、集合時間丁度に来る人が多い。私は1分や2分遅れるくらい。
今図書室に居るのは私と先輩だけだ。右京に会うのが気まずいからって、早く来すぎたかもしれない。
「あ、あの…すみません…早すぎましたか…?」