再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司

トラブルは突然向こうからやって来る

「えぇー、ヤダ」
私は処置室で敬に向かって大きな声を上げた。

「ヤダってお前」
敬はあきれたように私を見ている。

患者の検体から毒物が検出された。
はっきりとはわからないが農薬のようなものではないかと考えられている。
検査の結果がすべて出そろえば、もっとはっきりしたことがわかるだろう。

「念のためにやれることはすべてやるべきなんだって」
なあわかるだろうと、優しく言う敬。

それでも私は拒否していた。

そもそも、敬がやろうとしているのは胃洗浄。
薬物過剰摂取や毒物の誤飲の時に行われる処置。
文字通り口や鼻から管を入れ薬や活性炭できれいにすること。当然胃カメラの何倍もの苦しみを伴う。
もちろん私だって、その必要性も有効性もわかっている。
でも、今この状態の落ち着いている私に必ずしも必要とは思えない。
きっと体に入った毒物が少量だったんだろうと思う。そのことは私の血液検査の結果が出ればわかること。だから、もう少し待ってほしいと言っているのだ。

「イヤだからね」
相手が敬だから私は強く言い切った。
「お前なあ・・・」
敬は困ったように黙り込んだ。

その時、

「いいから、胃洗浄の準備をしてください」
聞きなれた声が耳に入ってきた。
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