再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司
隣とのスペースを仕切るカーテンを閉められ、新太先生と2人きりになってしまった。

「環」

いつの間にか椅子を持ってきて私の目の前に座った新太先生。
私は顔を上げることができなくて、じっと床を見つめた。

「困った奴だな」
クシャッと頭を撫でられる。

それでも、私は唇を結んだまま無反応を貫く。
口を開けばきっと説得されてしまう。わかっていたから頑なになった。

「どんなに嫌がってもやるからな」
「・・・イヤ・・・絶対に、イヤ」
先生の方は見ることなく、小さな声で答える。

「ダメだ」
穏やかだけれど、はっきりとした宣言。
普段仕事ではあまり見せない顔。それでも、

「どうして?こんなに落ち着いているし、必要ないじゃない。どうしてそんな意地悪言うの?」
とうとう私は泣き落としに出た。

自分の体は私自身が一番よくわかっている。ましてや私は医者で、医学の知識だってある。その私が必要ないと思うんだから、やらない。
私の中で気持ちは固まっていた。

「なあ環、」
新太先生は私の両頬に手を当て、少し屈んで私と目線を合わす。

さすがに逃げ場をなくした私は目の前に迫った新太先生を見つめ返した。
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