彼女をマンションに泊めたことで、俺は副院長に呼び出された。
そのこと自体は想定内だったから、何とも思ってはいない。
副院長は環を実の娘のようにかわいがっているし、少し過保護なところもある。きっと文句を言われるんだろうなと覚悟していた。

「新太君はいくつになったんだ?」

病院管理フロアの副院長室。
大きな窓の眺めのいい部屋で高級そうなソファーに座り俺と向かい合った副院長は、まじめな顔で俺を見ている。

「33になりました」
「そうか、大きくなったなあ」

へ?
この年になって大きくなったって・・・
何とも返事のしようがなくて、固まった。

「君のことは子供の頃から知っているからね」
「はあ」

確かに、副院長は父の友人で小さいころからかわいがってもらった。
たくさんの部屋と大きな庭のある副院長の家が俺は好きだった。
夏は虫取り、秋は芋ほり、冬は庭で雪合戦をして遊んだ。
そう言えば、子供の頃庭の松の枝を全部折って叱られたっけ。懐かしいな。