再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司
「な、なんで・・・」

唇を震えさせる塙くんの視線の先に私の右手があって、そこからは真っ赤な血が流れ出ている。

痛い。
私は焼けるような痛みに気が付いた。

塙くんの持っていたナイフが彼の首元に向けられた瞬間、私は自分の右手でそれをつかんだらしい。
もちろん無意識の行動だった。

「お願いもうやめて。これ以上誰も傷つけないで」
「・・・和田先生」

私の気持ちが通じたのか、諦めたのか、塙くんがナイフから手を放した。

「確保っ」
警官の叫び声と同時に押し寄せる人の波。

あっという間に塙くんは押し倒され、地面に押し付けられ体中を押さえつけられる。

「やめてっ」
お願いやめて。

無抵抗の塙くんに何人もの人が乗り、踏みつけられるようにして拘束されていく様子に思わず声が出た。
顔も服も泥で汚し唇の端から血も出ている塙くん。
確かに彼は罪を犯したのかもしれないけれど、でも・・・
私は痛みも忘れて、ボロボロと泣きだしてしまった。
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