「環先生ー、こっちこっち」

店に入ってきた私を見つけて手を振る一団。

「ごめんなさい、おまたせしました」
今日は定時で上がるつもりだったのに、最後の検査の手間取って遅くなってしまった。

「相変わらず忙しそうだな」
今日の飲み会のメンバーの一人である敬が、少しずれて席を開けてくれる。

「うん、まあね」

でも忙しいのは敬も同じはず。
勤務医なんてみんなバカみたいに仕事を抱えているんだから。

「環先生、飲みますよね?」
「ええ、とりあえずビールで」

すべに乾杯も終わりそれぞれがグラスを空けている中、私もビールを注文した。

「ところで、どうなんですか?」
向かいに座っていた女性スタッフの意味深な顔。
「どうって、何が?」
「やだなあ、新婚生活ですよ」

ああ。
やっぱりそれが聞きたいよね。

「普通ですよ。ただ同じ家にいるっていうだけで」

「「えぇー」」
きっと私から新婚生活のあれやこれやを聞きたかったんだろう女性たちから不満じみた声が上がる。

今日はスタッフ有志による飲み会。
結婚して2ヶ月の私はほぼ毎週末こんな飲み会に連れ出されている。