過保護な御曹司の溺愛包囲網~かりそめの妻かと思いきや、全力で愛されていたようです~
再会は突然に
翌朝はメールの着信音に邪魔されて、予定外に早い時間に目を覚ましてしまった。
スマホの方へ時差を無視して送ってくるのは、大方母親からだろうと予想ができてしまう。なんだか定期メールのようだと思ったのは、パリへ来る前の話だ。海外にいようが何していようが、変わらず送られてくる。
眠い目を擦りながら、ため息交じりにサイドテーブルへ手を伸ばした。

「ん……やっぱりお母さんか」

布団に入ったまま、念のため内容を確認しておこうと操作をする。きっと大した用ではないだろうとわかりきっているけど。

【美香、頑張ってる? 日本に帰ったら、こっちにも顔を出すのよ。そうそう、前に話していた彼氏も連れておいで】

「はあ」

週に一度は送られてくる、さほど内容の変わらない催促のメール。これまでは深く考えないまま、つい適当に【はいはい】と返していたけれど、今朝ばかりはさすがに気分が沈んだ。

私には年の離れた兄がふたりいる。女の子が欲しかった両親はどうしても諦められず、あとひとりだけと授かったのが私だ。三人目はなかなか授かれなかったと家族から聞いている通り、私と下の兄とは10歳の差がある。
両親はもう67歳と高齢になってきた。実家を出て仕事ばかりしている娘が心配でならないという思いが、日に日に強まっているのだろう。

最初らか、彼氏などいないと言っておけばよかった。下手に明かしたばかりに、両親は期待を抱いてしまったのかもしれない。別れたなんて知ったら、きっと悲しませてしまうに違いない。
両親の気持ちを考えたら、メールでそれを告げるなどできなくて、とりあえず確信に触れないあたりさわりのない内容を返信した。

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