呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~
第3章 柘榴石のペンダント

第14話



 朝日が昇り、中庭の緑についた夜露が輝き始めた頃――エオノラは書斎で捜し物をしていた。ある程度目星をつけて探しているが一向に目的の物は見つからない。
「お兄様は一体どこにしまったのかしら……。大事な物は基本的に書斎にしまうはずだけど、全く見当がつかないわ」
 腕を組んで唸っているとジョンが部屋に入ってきた。

「お嬢様、朝早くからこんなところで如何なさいました?」
「良いところに来てくれたわジョン。お祖母様との手紙を探しているの。お祖母様が亡くなられた時、私は酷くショックを受けていたから、お兄様が思い出の大半をどこかに隠してしまったの。……どこにあるか知らない?」
 祖母は幼い頃、エオノラにルビーローズや宝石のことをよく話してくれた。思い返せば、直接的ではなかったにせよ、石との関わり方についても教えてくれていた気がする。
 もしかすると祖母は何かを知っていたのかもしれない。

 そう思うと、いてもたってもいられなくなり、何でもいいから手がかりを見つけたくなってベッドから飛び出してしまった。
(記憶が正しければ、私が石の声が聞こえる力に目覚めてから頻繁にお父様と手紙のやり取りをしていたわ。だから、手紙に何かヒントがあると思う)
 エオノラが手当たり次第探していると、ジョンが口を開いた。

「もちろん存じております。ゼレク様がしまっていたのは……こちらです」
 ジョンは書斎奥にある棚から大きな木製の箱を取り出した。床に下ろして蓋を開けると、中には祖母との手紙の束や絵はがき、ハンカチなどが入っている。
「良かった。これだわ」
 エオノラは手紙の束を大事に取り出した。すると、その下から両手のひらで収まるサイズの箱が現れる。

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