スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜
Ⅴ*

最後の決意




 快晴の空がどこまでも広がる昼下がり。

 燦燦と降り注ぐ太陽の眩しい日差しを浴びながら、首からぶら下げた立ち売り箱をしっかりと握りしめて街へとやって来た。

 後ろからは私を追いかける、保護者みたいなハイネの足音がちゃんと着いてくる。

 人で賑わう路上で一際目立つ私は今までみたいに視線から逃げることもなく、それが好都合と言わんばかりにお腹から声を出す。


「国王様のお陰で立派に育ったロマンテの香り袋、お一つ如何ですか〜!」


 露天商街の片隅、私は行き交う人に声を掛けては笑顔を振りまく。

 婚約者として認知された私を見かけた人は、何だ何だとこちらを見ては近づいてきてくれる。


「気持ちを落ち着かせたい時や中々眠れないそんな時、国王様がこの国を大切に守るようにきっと安らぎを与えてくれます!銅貨三枚で今なら二袋です!どうぞ如何ですか〜!」

「あれって……ルフィア様だよな?」

「ええ、今日は御一人みたいね。それにしてもいつ見ても綺麗な髪だこと」

「母さん!あの大きい白いモフモフ何ー?」

「触りたーい!!」


 ハイネ怯えることなく子供達が毎日欠かさず行ってきた、完璧なブラッシングによって完成された毛並みを見て、瞳を輝かせてこちらへ視線を向けてくる。



< 175 / 237 >

この作品をシェア

pagetop