囚われて、落ちていく
「え?」
「いいか。
俺が欲しいのは、お前から得られる裏の情報。
闇の金の流れ。
だからプライベートなことへの気遣いはいらない。
お前の脳から、俺の結婚の事実を消し去れ」

刹那の鋭い視線。
あまりにも恐ろしく、闇に落とされた気分だ。

「はい…かしこまりました……」

「兄さん、もう行かないと仕事が立て込んでるから」
瞬作が耳打ちする。
「ん」
刹那が立ち上がり、ドアに向かう。

「いいか。
“プライベートへの気遣いはいらない”
この意味がわかるよな?
肝に銘じとけよ」
部屋を出る前に、一度振り返り言った刹那。

その言葉の重みを感じた早川。
静かに頭を下げた。

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その頃の都麦。
エコバッグを片手に、ゆっくり歩いて帰路についていた。
「ちょっとだけなら、ぷらぷらしてもいいよね?
消耗品しか買ってないし」
当てもなく、街を歩く。

「カッコいい!このジャケット…刹那さんに似合いそうだなぁ。よし!買うか!
…………って、サイズがわからない…」
刹那に服を買おうとしたのはいいが、サイズがわからない。

(うーん。刹那さんは細いからこのくらい?
いや、でも細マッチョって感じだからこっち……?
うーー
今度、一緒に来た方がいいかも?)
と考えながら、ジーッとジャケットを見つめていた都麦。

「何をお探しですか?」
男性店員に声をかけられた。
きっとあまりにも、都麦がジャケットを見つめ動かないからだろう。
「あ、いえ!だ、大丈夫です!
…………あっ!」
都麦はその男性店員を見て思う。

(刹那さんと体型が似てる)

「あ…あの……大変失礼なんですが、店員さんはこのジャケットを買うとしたら、サイズはどれを買われますか?」
「は?」
「あ、いや!旦那さんが、店員さんと同じような体型なので参考にと………」

そこまで言うと、都麦の言わんとしていることがわかったようで、店員は微笑みスッとサイズを選び手渡してくれた。

「都麦?」
その店内の様子を、たまたま外から見ていた刹那。
威圧感を出していた雰囲気が、更に重く圧迫された。
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