囚われて、落ちていく
再会
「高そうなピアスね!」
「やっぱ、社長婦人は違うわね!」
都麦は、久しぶりに友人二人(由利(ゆり)佐和(さわ))と食事をしていた。

「やっぱ、似合わないよね……」
「だから!気にしないの!!」
「そうよ!そのホステスの妬みなんだから!」
「うん……」
都麦は右耳に触れ、ゆっくり頷いた。

「あ、そうそう!
先週、東矢(とうや)に会ったよ!」
由利の言葉。
「え?東矢くん?」

東矢とは…相沢(あいざわ)東矢と言って、都麦の高校生の時の恋人だ。
東矢もかなりのイケメンで、なんとなく刹那と似ている。
都麦が刹那に一目惚れしたのは、どこかで東矢の面影を見たからかもしれない。

「うん。
都麦が結婚したって聞いて、かなりびっくりしてたよ!」
「え?」
「都麦は、待っててくれると思ってたって!」
「はぁぁ?そんなの、勝手じゃん!」
由利から出た東矢の言葉に、佐和が怒る。

佐和が怒るのも、無理はない。
東矢は一方的に都麦に別れを告げ、都麦の前から姿を消したからだ。

元々は由利の高校の時の彼氏・一雄(かずお)の友人で、お互い友人を通じて知り合った二人。
高校が違った為、毎日東矢は都麦の高校に朝は送り帰りも迎えに来ていた。
交際期間は一年間だったが、とても幸せだった。

しかし東矢が何の前触れもなく突然、別れを告げてきたのだ。

「だから私もそう言ったよ!
勝手にいなくなったのは、東矢でしょって!
そしたら、その事かなり反省してた」
「そうなんだ…」
「会って謝りたいって言ってたんだけど、どうする?」
「え?でも…二人で会うのは……」
「だよね……」

「じゃあ、ここに呼べば?」
佐和が提案してきた。
「え?い、今から!?」
「うん。
私も文句言いたい!」
「で、でも………」

都麦の心の準備もない中、結局半ば強引に呼び出したのだ。
「都麦、久しぶり」
「東矢…くん」

東矢は都麦が好きだった、あの高校の時と全く変わっていなかった。
都麦は瞬間的に、高校生に戻った感覚に陥っていた。
< 20 / 58 >

この作品をシェア

pagetop