囚われて、落ちていく
画面に“刹那さん”の文字。

「もしもし、刹那さん?」
『つむちゃん、今どこ?』
「え?デパートだよ」
『早く帰りな。危ないよ?』
「大丈夫だよ。まだ真っ昼間だし」
『真っ昼間でも、つむちゃんを連れ去る輩はいるよ。それに……』
「ん?」
『元々は、今日は美容室だけの予定でしょ?
ランチは終わったんでしょ?だったら、もう帰んなきゃダメだよ』
「刹那さんは……」
『ん?』
「私が信用できない?」
『信用?』
「うん」
『つむちゃんのこと“は”信用してるよ』
「だったら、ちょっと位……」
『でも!』
「え?」
『つむちゃん“以外”は信用してない』
「え……」
『だから、つむちゃんを一人にしたくない。
つむちゃんって、自分が思ってるより狙われてるんだよ。いつ誰が、つむちゃんを連れ去るかわからない。
言っておくけど、つむちゃんを拐うのなんて簡単なんだからね!だから常に、つむちゃんの行動を把握しておきたいって言ってるんだよ。僕がずっと傍にいれたらどんなに安心か、つむちゃんにはわからないだろうなぁ』
「刹那さん…」

『僕と一緒なら、どこでも連れていってあげるよ?
だから、もう帰りな!
つむちゃん、どんな髪型になってるか楽しみにしてるよ!』
「うん」


刹那が帰宅して、玄関で出迎える都麦。
「つむちゃん、可愛い~////スッキリしたね!」
セミロングだった髪型をショートボブにカットした都麦。
刹那は満面の笑みになり、都麦を抱き締めた。

「そ、そうかな////ありがとう、刹那さん。
刹那さんにそう言われるのが、一番嬉しい!」

「フフ…可愛い、可愛い、可愛い、可愛いなぁ。
どうしよう、ずっと見てられる」
帰ってきてから刹那は、都麦から一切離れず目を反らさない。
玄関から直行でソファに移動し、ずっと都麦を見ている。

「刹那さん、まだご飯作ってる途中だから離れて?
刹那さんもスーツのままだよ?着替えないと皺になっちゃう…!」
「んー、もう少しだけ」
「……////」
「つむちゃん?」
「恥ずかし…////」

カッコいい刹那にひたすら見つめられていると、さすがに都麦も照れてくる。
顔を真っ赤にし、俯いた。
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