囚われて、落ちていく
いつの間にか眠っていた刹那。
目を覚ますと、都麦が腕の中にいない。

ガバッと起き上がり、ベッドを飛び降りた。

バンッとドアを開ける音をさせ、キッチンに向かう。
「あ!おはようございます、刹那さん!」
「都麦!!」
突然、刹那に抱き締められる都麦。

「え?え?え?
ど、どうしたの?」
「腕の中にいなかったから……」
切ない刹那の呟き。
どこにこんな弱々しい声を隠してたのだろう。
刹那自身も、自分に驚いていた。

「ごめんね…昨日の夕食途中で眠っちゃったから、片付けと朝食作ってたの」
刹那の背中をゆっくりさする。

「つむちゃんといると、調子が狂う。
僕が僕じゃないみたい……」
「え?ご、ごめんね!
どうしよう。なんか私……刹那さんを困らせてる?」
「………ううん。違うんだ。
つむちゃんのこと、好きすぎて大変ってことだよ!」
腕を緩め、都麦の顔を覗き込んだ。

「そんなの……私の方が、好きすぎて困ってるよ。
捨てられないように、毎日必死なの!」
都麦も刹那を見上げ、両手で刹那の頬を包み込んだ。

「心配いらないよ?
僕はつむちゃんから、放れないし放さない。
だから安心して?」
「うん…」
自然と口唇が重なり、深くなっていく。

「ンンン……」
そこに刹那のスマホが鳴りだした。
「ンン…刹…さ……電話…」
「ん……僕に集中して……?」
「んんっ…ぷはぁ……」
「フフ…ごちそうさま!」
しばらく都麦の口唇を貪った刹那は、満足したように自分の口唇をペロッと舐めた。
そしてスマホを取りにいった。

自室でスマホを確認する刹那。
ここは完全防音で、外に絶対声が漏れない。
不在着信の名前“瞬作”の文字に、一瞬で雰囲気が闇に落ちたように黒く染まる。

「もしもし、なんだ?俺が家にいる時は連絡してくんなって言ったはずだ!」
『ごめんね。早川大臣から連絡があって、至急来てほしいんだって』
「は?また?」
『うん、今下に車回してるから来てよ』
「わかった」
刹那は、通話を切り一度大きく深呼吸をした。

恐ろしい雰囲気を消して、部屋を出た。
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