囚われて、落ちていく
核心をつくことができない都麦に対し、刹那はタガが外れたように理性が効かなくなっていく。

「つむちゃん、今日の予定は?」
いつものようにソファに並んで座り、足を組んだ刹那が都麦の顔を覗き込んで言った。

「お買い物行ってくるよ。今日は肉の日だから」
「肉?」
「うん、29日。29(にく)の日!」
「フフ…つむちゃん、買い物上手だね!」
「だって私、主婦だもん(笑)!!」
「そうだね!フフ…そのドヤ顔、可愛い~
朝から、ヤらしい気分になる……」
そう言って、口唇を寄せる刹那。
口唇が重なった。

「ンンン……」
「可愛い…」
「刹那さ…もう…行かなきゃだよ?
瞬作さん、待ってるよ?」
「うん。でも都麦……俺と一緒にいる時に、俺以外の男の事なんか考えちゃダメだよ…!
いつも言ってるよね?」

(あ…スイッチ、入った……)
都麦は、身構えた。

最近の刹那は嫉妬すると“俺”と言ったり“都麦”と呼ぶのだ。
「刹那さん、ごめんね…そんなつもりないの」
「ほら、この中から俺以外の人間を消し去って?」
都麦の頭をゆっくり撫でる、刹那。

するとインターフォンが鳴った。
「あ……刹那さん、誰か来たみたい。
瞬作さんが呼びに━━━━━━」
「都麦!!」
「え?あ…ご、ごめんね!」
「どうすれば、都麦の頭の中から俺以外の人間が消えるかなぁ?」
都麦の頬を両手で包み込み、刹那の顔が近づく。

「ごめんなさい…」
「都麦、俺の名前呼んで?」
「刹那さん」
「もっと呼んで?」
「刹那さん」
「もっと」
「刹那さん」
「いい?何度も俺の名前を言い続けてみて?
不思議と俺しか頭の中にいなくなるだろ?」
「………」
「何もわからなくなって、俺だけを求めて?」

「刹那さん…」
「ん?」
「怖い…」
「うん。もっと“恐怖”を刻み込んであげようか?
そうすれば………」
都麦の口唇をなぞる。

「本当に都麦は、俺しか考えられなくなる……」
口唇が重なった。
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