囚われて、落ちていく
「刹那さん、瞬作さん、送ってくれてありがとうございました!」
スーパー前に着き、瞬作がドアを開ける。
刹那が降りて、手を差し出す。
その手を握ると、グッと引き寄せられて顔が近くなる。そして腰を抱かれた。
「……////刹那さ…////」
顔を真っ赤にする都麦。

「つむちゃん、何かあったらいつでも連絡していいからね!僕のお願い聞いてくれてありがとう!」
もう片方の手で、頬をなぞられ言われて更に耳まで真っ赤になる。
「うん////
あ、あの…刹那さん…も…離して…?
は、恥ずかしい……」
「うん…どうしよう…キスしたくなった……」
そして今度は、口唇をなぞってきた。

「やめて…////」
「フフ…帰ってからいっぱいしようね!」
そう言って刹那は、車に乗り込んだ。
瞬作がドアを閉め、都麦に向き直り言った。
「じゃあね、都麦ちゃん」

「はい。瞬作さん、刹那さんのことよろしくお願いします!」
「……/////」
微笑み言った都麦を見て、思わず顔を赤くする瞬作。
そして運転席に乗り込んだ。

「ねぇ、瞬作」
もう既に、雰囲気は黒く染まっていた刹那。
「ん?」
「やめろよ」
「え?」
「都麦のこと」
「は?」
「奪うなってこと」
「まさか!そんなことしないよ」
「だったらいいが…」
「当たり前でしょ?兄さんの女に手を出す奴なんていないよ」

「そうだな。そんなことしたら、問答無用で地獄行きだ。都麦は俺だけのモノなんだから………!」

瞬作はバックミラー越しに刹那を見て、寒気がしていた。
刹那は二重人格なのだろうか。
それとも、二人いるのだろうか。

それ程までに、都麦の前では態度や言葉遣い、雰囲気…全て違うのだ。
あんなに穏やかに優しく微笑む刹那は、見たことがない。

そんな刹那。
今は威圧感丸出しで、煙草を咥え腕を組んでいる。
「兄さん」
「あ?」
「都麦ちゃんには、一生言わないつもりなの?」
「は?」
「兄さんの正体だよ」

「あぁ…そうだな……」
刹那は車の窓から見える流れてく景色を、煙草を咥えただボーッと見ていた。
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