「本当にお兄ちゃん、家庭を持つのが嫌だったみたい。あのね、お兄ちゃん育児放棄されてたんだって」
「育児放棄?」
「うん、前の奥さん、お兄ちゃんを育てられなくて、家を出てったって。前の奥さんから見ると、どっちにも似てなかったから自分の子だって思えなかったんだと思う ……何でわかるのかって、私もそうだったから」

はっと気付く。前に言ってた彼の言葉。
彼女を見ると、ベッドに広がる髪の毛は綺麗な黒髪だ。それに彼女が宙を見る目も、綺麗な茶色。
だけどきっと、昔は違ってたはず。

「髪の毛の色、明るかったのよね?」
「うん、昔は金髪みたいに明るくて、目もすごく薄い色だった。お父様は、昔の自分もそうだったから自分の子だってわかってたけど、他の人から見たら、違うように見えるよね」
「言われたこと、あるんだ」
「まぁ影では『どうせ奥様が外で作った子なんでしょ』って言われてたよね」
「誰に?」
「家政婦さんとか」

あぁ…と納得はする。
あの『ハウスキーパーとトラブル』で彼が面倒を見ていた期間は、これが起因かと。
同じ目にあってた彼がそうした訳も、何となく納得はする。

確かにちらっと彼女らの父親を見たが……背が高い以外は、特に特徴のない人だった。そもそも私が一瞬で顔を覚えられないぐらい、普通の日本人に溶け込む人だった。

だから親と並んでも……きっと親子には見えないのだろう。