小さな願いのセレナーデ
テーブルに置かれてたのは、ほんのりとオレンジ色をした丸いホットケーキだ。

「碧維も食べたけど、大丈夫だったよな?」
「うん、大丈夫よ。ありがとう」

いただきますと手をあわせて一口口にすると、にんじんの甘い香りがふわっと鼻から抜ける。野菜が苦手な碧維の為なのか、すり下ろしたにんじんが入っているようで、瑛実ちゃんの優しさを感じる。

私が食べ始めると、彼も前の椅子に座った。

「晶葉、今日は仕事休めないのか?」
「一応休むことは考えているよ」

教室の方は、私が体調を崩しやすいことは承知している。今までに何度も休んでいるし、代わりの人も何人か控えている(主にプロの人が空き時間を登録しているのだ)何なら代わりが見つからないなら、最終的には蒲島先生がレッスンを変わるからとまで言ってくれているし、何とかなるだろう。


「じゃぁ休んてくれないか?ちょっと一緒に行きたい所もあるんだ」
「少しだけなら…」
「うん、じゃぁよろしく。晶葉はゆっくりしてて。碧維は大輔と送ってくよ」

そのまま私の指示で碧維の保育園の支度を終わらせると、ホットケーキを食べ終わった頃には二人で家を出ていった。
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