小さな願いのセレナーデ

二人が出ていくと、私は各所に連絡をして、またゲストルームのベッドで寝ることにした。
今まではいくら体調が悪くても、碧維の世話があった。だから正直、今の状況はありがたいのは確かだった。

(こんなのんびりするの、いつぶりだろう……)

今までは、秀機君や蒲島先生が買い物してくれたり、ご飯の準備をしてくれたりなどのサポートはあった。だけど碧維の世話を任せたことはなかった。碧維がどうしても嫌がったから。

碧維が成長したのか……碧維が昂志さんに特別な思いを持っているのか、どっちだろう。
やっぱり本能で父親がわかるのだろうか。
そんな事を考えながら目を閉じると──また眠りの世界に落ちていた。


次に目が覚めた時は、もう十二時前になっていた。

「晶葉さん、おはようございます」
リビングに行くと、ちょうどユキさんがやってきた。ユキさんは今は週四日、この時間に来ているらしい。

「もう昂志さんが帰ってくるみたいなので、準備をお願いしますね」と。そう言われて私は慌てて自分の身支度に取りかかる。
ゆっくり寝れたおかげで、頭痛は殆ど無くなっていた。
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