「まず、君と下里さんはどうやって出会ったんだ?」
「晶葉さんのウィーン留学中に出会いました」
「……となると、交際期間は短いね?」
「仰る通りでございます」

妊娠が発覚したのは、ウィーンから帰国後すぐ。時期的にウィーンで悪い男に引っ掛かったんじゃないかと心配したし、時期が時期だけに色んな憶測を呼んだ。彼女は子供の父親について絶対に口を割らなかったから、真面目な子が羽目を外してしまっただとも噂されていた。
だけど生まれた子供を見ると、父親がヨーロッパ系としては日本的な特徴しか現れて無かったから、その点は少しほっとしていた。
だからきっと、秘密裏に恋人が居たのだろうと思っていたが、まさか……引っ掛かってしまった相手が、日本人だったとは。

子供の父親については仲の良かったピアニストの土屋君が疑われていたし、自分もそうであればいいと思っていたのは本当。
だが産まれた子を見ると、違うんだなと少し落胆したのも本当。いつか土屋君が父親になってくれないだろうかとも思っていた。


もし本当の父親が現れたら、散々責め立ててやろう。徹底的に戦って毟り取ってやろう。そう思っていた。
だがこの彼を目の前にすると、口を割らなかった訳はわかる。