小さな願いのセレナーデ

そして日曜日の午後三時。
私は碧維と、久我家に来ていた。

「こんにちは…」
「こんにちは、碧維君」

玄関で、ユキさんが迎えてくれる。
ベビーカーから碧維を下ろすと、さっと私の後ろに隠れた。恥ずかしいようだ。

ふふふと笑ってるユキさんに対し──後から来た瑛実ちゃんは、きょとんとした顔で碧維を見てる。


「よろしく、碧維君」
一瞬振り向いた碧維と瑛実ちゃんと目があった。
だが碧維は相変わらずのようで、私の膝におでこをぐりぐり押し付けて、最大限の恥ずかしさを表現していた。


そしてユキさんに碧維を預け、いつも通りレッスンをする。
終わるとすぐ、キッズルームへ碧維を迎えに行った。

「碧……」
ドアを開けるとすぐ碧維を見つけた。
室内砂場でスコップを持つ碧維の隣には──昂志さんが居る。
二人でスコップを持って、砂を掘っていた。


「ママぁ~」
私を見つけた碧維は、スコップを投げて走ってくる。
何故か手には、パウポリスのキャラクターのミニカーを持ちながら。

「どうしたのこれ?」
「俺から。ダメだった?」
「……あんまり甘やかさないで欲しいわ」
「ママを待っていたご褒美だよ」


碧維はぶんぶんと振り回している。
よっぽど嬉しいらしい。
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