ユキさんがカモミールティーと美味しそうなケーキを用意してくれたので、ソファーに移動していただくことにした。

「……何ですか?」
私がケーキにフォークを刺している姿を、昂志さんはじっと見つめている。

「いや、美味しい?ホテルのラウンジのやつだけど」
「美味しいですよ」
もぐもぐと口を動かす様子も、なぜかじっと見つめられる。何だか非常に、食べづらい。

「何かねぇ、癒されるんだよね。先生の空気」
「昂志さん、もう少し気の効いた言葉を選ばないと、女性は喜びませんよ」
「知ってるよ。ユキさんが居るから言えないけど」

一瞬だけびくっと動揺したが、すぐに何も聞いていない風を装って、フォークをブスりと刺した。
少し冷や汗はかいているが。

「……あんまり"知り合い"だったとは言え、今は"生徒の保護者"なんですからね」
「知ってるよ。だからもどかしい」

さらっと何気なく言うので、動きが止まる。
ポトッとフォークに刺したケーキが皿にこぼれ落ちた。

「気にしないでね」
そう微笑んで、ハーブティーのカップに口を付ける昂志さん。
いや…普通は気にします。そんな言葉はケーキと一緒に呑み込むことにした。