政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】
プロローグ





小学校六年生の夏休み、日和は家族で沖縄に来ていた。

日和の家は老舗旅館を経営していて、その当時は売り上げもよく他の家庭と比べても裕福な生活をしていた。しかし好奇心旺盛な日和は親の目を盗み家族から離れてしまう。そのせいで日和は迷子になるが…―

『何してんの?』
『…え、あなた、誰?』
『誰でもいいだろ。なんで泣いてんの?親は?』
『離れちゃった…』
『わかった。じゃあ俺についてきなよ』

そのあとのことは、あまり覚えていなかった。ただ、無事に家族のもとに帰れたことと、同じくらいの男の子が日和の手を握ってくれた温もりだけは覚えていた。それはとてもとてもあたたかいものだった。

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