エリート官僚は授かり妻を過保護に愛でる~お見合い夫婦の片恋蜜月~
2.妊娠発覚



「赤ちゃん、できたみたいです」

はにかんだような困ったような妻の笑顔に、俺は動きを止めた。
赤ちゃん、それは俺と彼女の子どもで、つまり彼女のお腹には新しい命が宿っているということ。

どうしよう。
まず思ったのはそれだった。
同時に自責の念が湧いてくる。あれだけ毎晩のように抱いていれば、赤ん坊だって授かる。

確かに俺もほんの数日前まではそれを望んでいた。
しかし、今は状況が違う。
赤ん坊がいたら俺は彼女を解放してやれないじゃないか。

「駿太郎さんの赤ちゃんですよ」

狼狽してしまい彼女になんと応対したのかもよく覚えていない。彼女がもっともっと困った顔になり、不安そうに瞳を揺らしているのに気づきながら、言葉が選べない。結局ごまかすように喜んだフリをしただけだった。
俺の不器用な演技では、妻はきっと違和感を覚えているだろう。だけど、俺にもどうすることもできなかった。

……俺は知ってしまった。
見合いで結婚した妻には、長く想う人がいたことを。

そして、彼女との話し合い次第では、俺は身を引こうとまで考えていた。それなのに、赤ん坊ができてしまったとは。

もう彼女を自由にしてやれない。想う男のもとへ送りだしてやれない。
俺は、どうしたらいいんだろう。


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