何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】

恐怖の前ぶれ

その晩、士導長は京司が回復に向かっているという知らせを聞いて、見舞いにと足を運んでいた。
そして彼を見舞った後、皇后は士導長を呼び出し、二人だけで話をし始めた。

「皇后様。よかったですね。天師教様が回復に向かって。」

そう言って士導長が嬉しそうに笑った。

「ええ…。」

しかし、皇后はなぜか腑に落ちない表情を見せた。

「どうかなさいましたか?」

士導長は思わず皇后に尋ねた。 何か気がかりな事でもあるのかと。
しかし、聞かなければよかったと後悔してももう遅い。

「あの子、好きな人がいるの…?」
「え…?」
「…そうなんでしょ?」

皇后が真剣な眼差しで、士導長に詰め寄った。

「…。」

しかし士導長は、固く口を閉ざす事しか出来ない。

「誰なの?あまね…って…。」
「ここで、その名を口にしてはいけません。」

士導長は表情を強張らせ、そう口にした。

「え…?」
「天音は…。」

< 115 / 287 >

この作品をシェア

pagetop